キン肉星の王位 争奪戦が終わり、超人界には 平和と安息の日々が訪れた。 　
そして、新しい大王となったキン肉スグルの 実兄であり、キン肉マンソルジャーとして
「超 人血盟軍」を結成したキン肉アタルもまた仲間 と共に戦いの無い時間を過ごしていた。

「なあ、キャプテンはいつまであのマスクを被 っているんだろうな」 　
ニンジャの淹れたお茶をすすりながら、ブロ ッケンJr.がふいに話題を変えた。

「どういうことでゴザルか?」 　
すっかり家事をこなす姿が板についてきたニ ンジャが話に食いついてくる。

「そういえば、ソルジャーマンを倒してソルジャ ーになったんだよな」 　
茶柱が立っていることに少し喜んでいるアシュ ラマンが、串団子を食べながらブロッケンJr.の 話題に乗ってくる。 　

すなわち、アタルは生まれたときからソルジャ ーマスクを被っているわけではないので、それ以 前の顔があるということなのだ。
ちなみに弟のス グルは幼かったので、兄の昔の顔を知らないらし い。

「つまり、もうソルジャーマスクでいる必要はな いわけだよ」 　
どうやらブロッケンJr.はアタルのマスクが気 になってしょうがないらしい。
今すぐにでも聞き に行こうかとしているくらいである。

「なるほど、アタル殿の本来の顔でゴザルか。確 かに気になるでゴザル」 　

本来ならばキン肉王家の大王になるはずだった のに、スパルタ教育に耐え切れず家出した過去を 持っている。
それだけに好奇心をくすぐる要素は とても多かった。

「だからといって、聞いても簡単に教えてくれそ うにないしな…」 　
腕を組みながらお茶と串団子を持って、さらに 頭の後ろでも腕を組むという芸当を可能とするア シュラマンが溜息を吐き出す。

「そこで、俺は思うんだけどさ。キャプテンもキ ン肉マンと同じマスクだったんじゃないのかな」 　
ブロッケンJr.の言葉で、3人の脳裏に想像図が 浮かび上がる。

ブタ鼻にタラコ唇、それに今まで のアタルの言動を当てはめてみる。 　
しばらくの沈黙が続き…、大きな笑い声が周囲 に響き渡る。

「カーカッカッカー、せめてキン肉マングレート にしてくれ」

「勘弁するでゴザルよ」 　

まさに腹がよじれるように笑った2人が、ブロ ッケンJr.の肩を叩く。

「…という話を3人がしていたのだが」 　

場所は変わって、とある居酒屋でバッファロー マンとアタルがお酒を飲んでいた。
どうやら、3 人の話を聞いてしまったバッファローマンも気に なり始めたようだ。

「まったく、あいつらは…」 　
迷彩模様の入ったソルジャーマスクから覗いて いるのは鋭い瞳だけであり、表情を読むことは難 しい。

「で、本当のところはどうなんだ?」

「お前もか……」 　
呆れながら冷酒を一気に喉に流し込む。

「このマスクが気に入っているし、今さら元に戻 したら他の連中が混乱する。それが理由だ」 　
あまり答えになっていないような感じだが、そ れ以上の追求を許さないような目つきになり、
さ すがのバッファローマンでも何も言えなくなって しまった。 　

謎の超人キン肉マンソルジャー、その最大の謎 が解き明かされる日は……来ないかも…。