┥┥┥ 秋風に乗せて ┝┝┝

 

 

 

 

 虫の音も響く頃、超人血盟軍の台所には、不思議な音が響いていた――

ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキ……

 大の男が二人、台所に立っていた。
 一人は、ぴよこエプロンをつけて大根の皮を器用にむいている。しかし、その手に握られているのは、包丁ではなく、日本刀――正しくは忍者刀と呼ばれる、直刃の反りの恐ろしく浅い刀――だった。こんなもので料理ができるのは、超人血盟軍の中でもザ・ニンジャ以外には存在しない。
 もう一人は、魔界のプリンス、アシュラマン。彼は、その存在から高貴さと崇高さを滲み出しながらも大根をおろすという、ミスマッチな姿をしていた。彼自身は、そんなことを微塵も気にして這いなさそうだったが。

 アシュラマンは、黄金の六本腕を器用に動かして大根をおろしていた。
「なぁ、ニンジャ。これは私じゃなければいかんのか?」
 アシュラマンはウンザリした顔でおろし金を見つめた。たぶん、これで5本目だ。大根をおろす際、あまり長いままだと邪魔なので半分に切っている。おかげで、何だか実際の量 よりもたくさんやっている気がする。
「バッファにやらせてみたら、案の定おろし金を曲げられたでゴザルよ。」
 アシュラマンは、仲間の中で一番の怪力を持つバッファローマンが、その身体に似合わない小さなおろし金で大根をおろす姿を想像した。ちょっとほほえましい気もする。しかし、彼とて力の出し方はわかっているはずだが…。
 安物っぽいおろし金を見て、納得した。きちんとした強度のある物ならば、彼の力にも耐えられたかもしれないが…。まあ、予算のことには口を出さないほうがいい事は知っている。ため息をついて、また手を動かす。
「…じゃあ、ブロッケンは?」
 アシュラマンは、最年少のブロッケンJr.を指名した。彼なら、おろし金をひん曲げるようなことは無いだろう。
 ニンジャは、少し黙って、何か良い言葉を捜した。しかし結局、何も見つからず有りの侭に述べた。
「……指をすりおろした」
 アシュラマンは、指から血を出しているブロッケンJr.を想像して、爆笑した。
 ニンジャは、ブロッケンJr.から硬く口止めをされていたのだが、まぁ自業自得というものだろう。大根おろしの一つも、満足にできない奴が悪いのだ。
 アシュラマンは、腹を押さえながらまだ笑っている。
「ブロッケンの血の雨が降った、ってとこか…不器用にも程がある」
 当の本人が聞いたら、きっと怒るだろう。ニンジャは、アシュラマンの言葉を聞かなかったふりをした。

 ひとしきり笑って、また大根をおろし始める。魔界のプリンスともあろう者が、今は大根をおろしている――。魔界の王である父親が見たら、なんと言うだろう。アシュラマンは、最後まで自分の考えに反対していた父を思い出して、苦笑した。
 ふと、多量の大根おろしの行く末を疑問に思ったアシュラマンは、ニンジャに聞いた。
「なぁ、これって何に使うんだ?」
「秋刀魚を七輪で焼くのでゴザルよ。ソルジャーが急に秋刀魚が食べたいと言い出してな。七輪じゃなきゃ嫌だと駄 々をこね出したらこちらの言うことをまるで聞かない」
 ニンジャは戸棚の奥から七輪を取り出して、軽く埃を払った。
「また、あの我侭キャプテンか…」
「珍しく自分で買いに行くと言ったから、任せてみたら20尾も買ってきた」
 苦虫を噛み潰したような顔で、ニンジャが言った。
「……そうか」  

秋の空に、大根をおろす音が響いた。

 

 

 

 

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 カインさんから頂きました!

 忍者刀で大根剥くニンジャと

 大根おろしてるアシュ

 なんてほほえましい光景!!!(え)

 プリンスのぴよこエプロン姿が見たいでゴザル〜vvvv

 大根おろしに敗退した牛とブロの理由が利に適ってマスね☆(わはは)

 兄貴の秋刀魚を買う姿が目に浮かびマッスル。

 今宵も秋の夜長にあの音が聞こえるでゴザろう…

 ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキ……

 (タイトルは勝手に付けさせて頂きました〜スミマセン<汗)


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